ハ ウ リ ン キ ャ ッ ツ

 ロックンロールを産み落とせ!

ぺ天使を腹の中にかくまっていたという話

むかしむかし、といってもそんなに昔の話じゃないけど、

って、臨月でお腹の大きいかのじょはぼそぼそとしゃべりだした。

寂れたレコード屋に行ったら、もう何年も誰も手を触れていないような「パブロック」の棚の「i」のところに、ちいさいおっさんが挟まって落ちてたんだよ。そりゃもう驚いて、あわててイアン・デューリーのレコードの間で埃まみれになってたちいさいおっさんの襟首を掴んで、引きずり出してやった。誰だって、困ってる人をみつけたら、とりあえずは助けるもんだろう? そっとレコードの背が並ぶ荒野の上におろしてやると、踊るようにひょいひょい歩いて、おっさんはしゃちほこばって頭がつま先につきそうなお辞儀をしたよ。これはこれは助けて下さってありがとう、ガール、もう何年も何年も、ロックンロールにとらわれっぱなしで、背骨がDコード展開しそうでした、そう私に言ったんだ。ぜひともお礼をしたい、というから、さいしょは辞退したんだけど、ちいさいおっさんはしつこくてね、そういう訳には参りません、あなたは金のエンゼルと、銀のエンゼルではどちらがお好みですか、って言うんだよ。てっきりお菓子の景品なんか思い出してね、ほらあれって、銀だとおもちゃの缶詰をもらうのに、3枚だか5枚だかあつめなきゃいけないんだろう、それなら金のほうがいいよなあ、とややこ狡い計算なんか頭の中でしちゃってさ、ついつい、それなら金のエンゼルのほうが得だよなあ、って言っちゃったんだ。ちいさんおっさん、レコードの背をわたりながら、喜んでくるくる踊ってね、それなら金のエンゼルをあなたにさしあげましょう、さあ手を出してご覧なさい、って言ったんだ。

おそるおそる左手を出したらね、小さいおっさんはかなりくたびれたモッズスーツの右のポケットから何かを出して、さあ右手でふたをしなさい、って私にうながした。慌てて自分の右手を左手に被せたら、確かにその両手の空間で、小さな蝶がぱたぱたしているみたいな、妙な感触が伝わってきた。それは、柔らかい翼がくすぐったく手のひらや、指にかすめる感じだった。

「金のエンゼルを大事になさい、レィディ。逃がさぬように」って小さいおっさんは急に重々しく言った。でも、大事にしろって言われても、いったいどうしてこの金のエンゼルを捕まえていたらいいんだろう。両手をこうして組み合わせたままじゃ、これからずっと、ろくにギターも弾けないし。小さいおっさんみたいに、ポケットに入れておけばいいのかな。小さいおっさんは、それでは金のエンゼルは逃げてしまう、と首を振った。じゃあ、財布の中に入れておこうか。お守りみたいにさ。小さいおっさんは、それでも金のエンゼルは逃げてしまう、と首を振った。それならどこにしまっておけばいいのだろう、と私が戸惑うと、いちばんいい場所がここにある、と言って、小さいおっさんが更に小さいギターたこのできたちょっと薄汚れた指で指差した場所、それがね、

私の子宮だったんだ。私はそうして孕んだんだよ、金のエンゼルを。まったくたまったもんじゃない。あの小さいおっさんはなんだったんだろうな、まさかロックンロールの神様っていうには、ずいぶん貧相な感じがしたしね。金のエンゼルだって、エンゼルなんていいもんじゃない、天使は天使でもぺ天使さ。人の腹を隠れ家にしやがって。金のエンゼル1枚でもらえる、おもちゃの缶詰が、私は欲しかったのにね。


ずいぶん長い話だったな、と私は呆れる。臨月のかのじょに戯れで、いったいその腹の子は誰の子なんだよ、って聞いたのは確かに私だったけど、まさかそんなへんな物語がかのじょの口から滔々と語られるなんて思いはしなかった。かのじょはチェシャねこみたいににやりと笑う。全てを物語に変化させ、そこにリアルより、よりリアリティのある真実を滑り込ませることが出来るかのじょのそういう語り口に、私は長い間ずっと、ずっと憧れてきたんだ。

日蝕の周辺に生まれてくるんだよ、だからそろそろ準備をしなくちゃ、とかのじょは言った。日蝕は、太陽と月が重なって、またふたつに分かれるから。そのときに私とこの腹の中のチビッコは、ふたつに分かれるんだよ。
そうだね、日蝕は、人が死んでいなくなって、それでまた生まれる。生と死と、ひとつとふたつ。ひとつのものはふたつになって、ふたつのものはひとつになる、そういうときだ。私はかのじょの満月みたいにまるいお腹を見ながら、ぼんやりとそういった。私の憧れの彼女はふっと笑った。

なんだ。

なんだ、わかってるんじゃないか。

何をさ?

君があの人に言ったんだ、どうしようもなく日蝕がこわいと言っていた南のあの人に。日蝕は、人が死ぬだけじゃなくて生まれる。一つ身がふたつに分かれて、ふたつ身はひとつに融合する。死ぬだけじゃない、きっと生まれもする。だから大丈夫だって。

一つ身はふたつに分かれて、ふたつ身はひとつに融合する。

思い出して、いや、思い出すまでもないでしょう。去年の6月9日、2011/6/9、「いいロックの日」と語呂合わせしたその日にばかばかしくも真剣に千年メダルをかわし合った人は、ほんとうはだれ? そのあとロックンロールを孕んだのは、ほんとうは誰だったの

大嘘をまじめについてきたペ天使はもうひとりいたようだね、とかのじょは眉をあげる。そして、私とかのじょは手を伸ばし合い、見つめ合い、ゆっくりと溶け合う。

太陽と月が重なるようにね。



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【Lust for】エースなロッカーに逢いに行こう!【rock'n roll!】‐まつもとから、日蝕でゴー!-

なかなか記事を更新できなくてスマヌスマヌ。書きたいことは色々あれど、5月ということを言い訳に、どうもぼんやりしている近日。去年の5月病が1年かかってようやくこないだ完治したと思ったら、あたらしい5月病にかかってしまった、というのが最新の詭弁。


ツアー始まってすぐの鹿児島から名古屋までのライブ参加者レポートはこちら
関西、長野はこちらでみんながレポートを書いてくれたよ!
鳥取から毎年ミラクルが起こると有名な岡山、ヒロトさんが誕生日を迎えた岐阜まではこちら
滋賀から山梨、甲府まで3月中のライブレポートはこちら
でどうぞ!
郡山、川崎を経て、東北のライブレポートは、こちらでどうぞ!
広島から高崎、北海道へ続くゴールデンウィークをまたぐ道中の様子はこちら


こちらの記事はザ・クロマニヨンズ「エースロッカー」ツアーの感想/ライブレポート/参加表明/クロマニヨンズへの想いの丈/遭遇情報など、何でも来い! で受け付けます。

なお、ライブレポートを受け付けている以上、セットリストや本ツアーの構成についてネタバレする可能性があります。ツアーも後半に入ったけれど、まずは自分の目で彼らの出現を見るのだ! と意気込んでいる諸君は、この記事のコメント欄を開かぬように。


みんな、さんざん5月の風のビールを飲めよ!

【Lust for】エースなロッカーに逢いに行こう!【rock'n roll!】‐ひろしまからレッツパーリナイッ!-

ああ、ぼくもう、彼らのライブに行けなさすぎて、彼らのことを忘れそう、と書こうとしてみて、ぜんぜん忘れていない自分に気づいてしまう。むしろ余計に彼の横顔は思い出の中にくっきりと。あの人への想いは、腹の中で回り続けるレコードなんだ、好むと好まざるに関わらず、ただぐるぐると愛をささやき続けるレコードなんだ。はやく彼や、あの人や、きみにも会いたいよ。


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なお、ライブレポートを受け付けている以上、セットリストや本ツアーの構成についてネタバレする可能性があります。ツアーも後半に入ったけれど、まずは自分の目で彼らの出現を見るのだ! と意気込んでいる諸君は、この記事のコメント欄を開かぬように。

シャラララッ♪

明るいのさ太陽は
ボッチボッチ♪

あの歌どおり、太陽がどうにもこうにも明るくて、良い日が続いているのでちょっとした旅に出てみた。ほんとにちょっとした旅だけど、久しぶりに海を見て、水田を見てさ、漁港で魚を食べたりしてね。もちろん使ったのは車だが、小学生の頃にはじめて自転車を手に入れて「これでどこへでも行ける」「もう、どこへだって行ける!」って地図を呆然と眺めていたときのことを思い出したよ。一漕ぎで少しだけ進むのはいい。自分の足で道をつたって、真っ当なやり方で線を引き、走って行くのは初夏にふさわしい。

房総半島まわりで木更津まで行ってみたんだけど、千葉県名産に落花生焼酎「ぼっち」というものがあったよ! 収穫を終えた落花生の木を、畑に積み上げて上部にワラをのせた小屋のように見える物を「ぼっち」と呼ぶらしい(ハコに書いてあった)。ついつい私はあの人の作った曲を思い出して「シャラララッ♪」って歌ってしまったけどね!

じゃあこれから彼らと「ぼっち」を堪能することにするよ! 太陽や富士山や三日月はすてきだけれど、今夜はそんな威風堂々さとは縁遠い、ちょっと情けなくて、くだらない繰り言も言いたい気分。そういうときは、一緒に飲む仲間がいたほうがいいね。

ひとりボッチが怖いから。

じゃあみんな、良い夜を!


そういえば、かえりみちに木更津に新しく出来たアウトレットを覗いてきたんですが、ヴィヴィアンウエストウッドとバーバリーのショップがあってあやうく発狂しかけました。アウトレットなのにアウトレットじゃない値段の買い物して……。いや、後悔はない! ポール&ジョーのワンピースがかわいくて「アウトレットだから買えるお値段かしら」って手に取ったら5まんえんでした。ちぇ。人が引いた頃にまた行きたいです。

忍び寄る初夏/空から降るもの

・毎年、この時期が苦手だという友人がいて、5月くらいになると彼女は何か鬱々としている。初夏で、あったかくなってきて、連休もあって、いったいどうして塞ぎの虫に取っつかれるわけがあるんだ、と去年までは思っていたんだが、どうもわかるような気もするな。桜が終わると、一気に幕をはぎ取るみたいに「はい! 春終了! 初夏です!」って誰かに大声で耳の側で言われてる感じがしてさ、ぼんやりしていると、ちょっと居心地悪い。「あ、まだ全然準備できてなくて」ってもごもご口の中で言ってる間に、世界が輝きを増して行く、その後ろめたさよ。5月というのは、諸刃の剣だ。なまけものには、少し苦い夜の手触り。

・秋冬は「夜が長いから」と本を読み暮らし、春夏は「昼が長くて明るいから」とやっぱり本を読み暮らしておる訳ですが、いっそもう本を読むのが職業になればいいのにね。椎名誠さんの短編小説で、そんなのあったけどね。読みましたよ『ロックンロールが降ってきた日』。ましまさんとヒロトさんのロックンロールとの出会いが語られているというインタビュー集。ほかにもチバユウスケさんやら浅井健一さんやら、なじみのある人のオンパレード。ともかく頭からしっぽまでぜんぶ美味しく頂いたのですが(もちろんこれはどこから読んでも問題ないタイプの本ではあるけれど、とりあえず最初から最後まで、それって一番大事なことだと思わないかい)「それぞれのミュージシャンのロックンロールとの出会いを語ってもらう」という趣旨が明確な、端正な本だと思いました。そつのないど真ん中のラインナップ、ほぼ年齢順の構成、インタビュアーの気配を消し去ったミュージシャンのモノローグ形式の掲載方法、ちょっと無駄がなさ過ぎるほどに端正な感じだけど、この手の話題の伝え方としては手堅い。私はもう少し「崩れた」感のある、にんげんくさいインタビューが自分の好みではあるのだけども。
しかし、ひとりくらい女性のミュージシャンが入ってほしかったよなあ。シーナさん……は大御所過ぎるけど、チャットモンチーとか、椎名林檎ちゃんとか、駄目だったのかなあ。そもそも男性より余計にしがらみが多い女性の立場からきちんとロックンロールを語ることの出来る人というのが、現れてもいい頃だと思うんだけどなあ。こうしたラインナップには、未だにあんまり女性の名前が挙がってこないよなあ。

・おい、たったいま、うちの前を通過した車、窓からエルビス・コステロが大音量で流れてたぞ。いかすじゃないか。コステロ、フジロックにくるそうだから、いまからもうワクワクしている人がいるのかな。

・そういえばロジャー・ダルトリーが来日しているね。知り合いが見に行ったら、ヒロトさんとマーシーがいたよ! とメールをくれたよ。相変わらずふたりで連れ立ってはライブに行っているようですね。今回ピート・タウンゼントは来ていないけど、すばらしいステージだったみたいで、知り合いからも興奮と熱狂の長いメールが届いた。ピートの病気がよくなって、またフーでも来てほしいね。

・リアルタイムで情報を収集したいことがあって、ツィッターを起動、珍しくあっちこっちライブ仲間のつぶやきなど追っていたら「ニアさん元気かな」とか言われていて笑った。ありがとう、元気だよ! またどこかのライブで会おうね! それから、クロマニヨンズ好きな人が、このところかなり多く50回転ズにも心奪われているようで、戸惑いつつ恋に落ちて行くのがわかる感じ、それもおもしろかった。50回転ズか、彼ら、2007年かな、ライブファクトリーの前座と、そのあとパンクスプリングか何かのフェスで見たなぁ。どっちのときもステージで華麗に飛翔していたが、滞空時間が実に長く、強烈なインパクトがあった。MCは声がうわずりすぎていて後ろのほうで見ていた私には「ケケケケケケ〜!」という威嚇にしか聞こえず、何がなんだかわからなかった。そのあと深夜のアニメの「墓場鬼太郎」のテーマソングやったんじゃなかったかな。妖怪じみた「ケケケケケケ〜!」を思い出し、妙に納得した覚えがある。なんだろ、ロックンロールに真っ当な姿勢が、ヒロトさんやマーシー好きな人のきもちを揺さぶるのはわかるような気もするな。

・私は、相変わらずレコードを聴いている。本道のパブロックを行きつつ、ちょっと寄り道して初期のエアロスミスなども。『ロックンロールが降ってきた日』のなかでマーシーがちらっと「いちばんいい頃のエアロスミス」を兄貴が見に行った、なんて話をしていたけれど、初期のエアロスミスって、ほんと、ものすごくいいな。私はエアロスミスはけっこう好きで、ライブにも行ったりしてるんだけど、完全に後追いで中期以降からしか触れてなくて、やっと改めて最初の3枚のアルバムなんか聞き直してみたら、もう、かんぜんにガレージロックだもの。そしてブルースがだいすきで、たくさん聞いて、ビートルズとかローリングストーンズの始まった頃と同じように、自分たちで「カッコいー!!」と思った曲を分け隔てなくカバーしているのがよくわかる。憧れと夢と勢いでキラキラしている。かっこいいカバーをたくさん聞くと、カバーというのはどっかでオリジナルを超えなくちゃ駄目なんだ、ということがわかる。これは文章とか作品にも言えることで、誰かの発想をそのまま真似てオリジナルぶることは、結局カバーではなくたちの悪いパロディだ。これはオリジナルさえもおとしめることになるから、そういう言葉をさも自分が発明したように、意気揚々と多用するのはやめたほうがいい。見る人が見れば、すぐに気づかれて、実に格好わるいぞ。ふふ、これは、ちょっとした皮肉だよ。

・しのびよる琥珀色の夕暮れ。あの人の新曲はサイダーという曲名らしいけれど、私はいま、サイダーよりもビールが飲みたいね。ロックンロールも悪くはないが、空からビールがざんざん降ってきたなら楽しいのになあ。あのこの塞ぎの虫もビールで洗い流されて、はやく隅々まであかるい夏が来たらいい。

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