ハ ウ リ ン キ ャ ッ ツ

 五線譜という名の線路を辿り、きみと奇跡を探しに行こう。

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

僕は物語が好きだ、心から好きだ。


スティーブン・キングの小説を読んでいると頭の中に「too much pain」が流れる気がする。『スタンド・バイ・ミー』とかさ、『IT』とかな。あのひとも読んだのだろうか。あの人の歌にも出てくるような、夏の子供たち、って感じ。おかしいよね、アメリカの片田舎の少年少女たちの成長の物語なんて、日本で育った私とはなにひとつ共通することなんてなさそうなのに、それでもやっぱり「ああ、こういう感覚、わかる」と思ってしまう。子供たちというのは実は深層心理、根っこの深い部分で世界中つながっているのかもしれない。生まれる前に母親とつながってたみたいにさ。
キングが手を変え、品を変え、ときにはホラーで、ときには青春小説で書いているテーマは最終的にはひとつだ。「きみが信じようと、信じまいとそれはそこにある」……できれば信じてほしいんだろう、彼は。そして信じているんだろう。彼の小説を読んでいると、まざまざと思い出す。壁に浮き出たしみの形が人の形なのが怖かった自分。お風呂に入って頭を洗ってるとき、目をつぶるともう一本の手がほほを撫でるんじゃないかと思ってぞっとした自分。紫の鏡、といういまだによくわからない言葉を忘れよう忘れようとするほど毎夜思い出していたこと。たわいない、と笑うなら笑えばいい。それなら、ロックンロールとはなんだ、と私は聞きたい。ロックンロールというのは2分15秒のたわいない希望じゃないのか。君が信じようと信じまいと、ごろりとこの世の底に横たわり、ただ鳴り続けているものじゃないのか。

ロックンロールに救われたことが一度もないように、ジョン・アーヴィングの小説にも一度も私は救われたことがない。『ガープの世界』は映画はわりに感動的にまとまっているが、原作はもっとひどい。これでもか、とばかりに不幸が背中にのしかかる中を、主人公が不幸に徐々に慣れながら歩いていく話だ。不幸に慣れていく過程にはぞっとする。信じられないほどひどいのに本人は割とひょうひょうとしている。『ホテル・ニューハンプシャー』もそんな話だし、アーヴィングのお話はほんとに私を1ミリも救わない。救わないどころかいつも打ちのめして嘲笑する。人生ってそんなもんだよ、悲劇ほど笑えちゃうのさ、って聞きたくもない教訓を耳打ちされているきもち。そんなこと知りたくはないよ。でも、読むんだよな。歯を食いしばって読む。何故ってこの本の中にはロックンロールの暗い面がたっぷり満ち溢れているからさ。人の不幸を笑うならともかく、自分の不幸すら笑い飛ばすような。おや、それってロックンロールというよりは、ブルースか。じゃあ、キングがよりロックンロール的で、アーヴィングはブルースなんだ。
キングが自著『ミザリー』の中でアーヴィングの『ガープの世界』について語っている。たかが物語なんかに気持ちを乱されたことはなかったが、と本書の主人公、ほぼ間違いなくキングの分身である流行作家は言う。『ガープの世界』を読んで、主人公の息子が不幸な事故で亡くなったのを読んだ後、長いこと眠れなかった。自分は、あの少年の死を本当に、心から悲しんでいたのだ、そんな体験は初めてだった、と。そんなのって憂鬱すぎる。でも、いい話だ。ばかばかしいって思うかい。でも、物語は、いつか君を変えるだろう。まるごと、根っこから、どうしようもなく変えてしまうだろう。それはいいことなのかな。わるいことなのかな。そんなくだらないことを考える前に、心が震える日がきっと来る。ロックンロールを聞くより物語を開くのはおっくうだし根気がいるけれどね、ああ、もちろん短い物語にだって、素敵なものは数多くある。

『頼むから静かにしてくれ』とか『ぼくが電話をかけている場所』の作者のレイモンド・カーヴァーもいいね。彼の小説を読んでいるとまるで円のまわりをいつまでもいつまでも永遠にぐるぐる回っているような気になる。いつまでたっても中心に行きつかない。問題なんてないんだ。いや、問題はある、でもカーヴァーは小説の中でそれを書かない。問題の周りだけを描写して、問題自体については触れない。だからあんなに不思議な短編小説になる。でも、どうしようもなくシャウトしているよ、彼は。底にどうしようもない狂気と凶器を秘めたバラード。村上春樹さんがカーヴァーの小説が好きで、たくさん訳しているね。春樹さんはキングもたぶんアーヴィングも好きだね。カーヴァーとアーヴィングには親交もあったようだね。好きなものというのはつながっていくんだよ。ロックンロールだってそうだろう。風船がふわふわ浮くように、物語はあっちこっちに浮いている。私はね、君のことが羨ましい。これからキングやアーヴィング、カーヴァーを読むことのできる君が。荒野だ。それは、荒野だぞ。思う存分、野垂れ死ね。わかりやすいものだけを摂取して生きていこうなんて無粋だよ。そうじゃないか。

さあ、24時間じゃ足りないくらいにロックンロールしよう。走りながらブルースを味わい、街へ出て本を繰るんだ。これからは、物語とロックンロールが舞台の、あの荒野が君の故郷だ。
スポンサーサイト

 | HOME |  »

Calendar

« | 2009-11 | »
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 - - - - -

Monthly

Categories

Recent Entries

Recent Comments

Recent Trackbacks

Appendix

ましま にあ

ましま にあ

Hey ho,let's go!

ましまにあと直接連絡を取りたい方は
mashimania(´・ω・`)hotmail.co.jp
(´・ω・`)を@に進化させて下さい!

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。