ハ ウ リ ン キ ャ ッ ツ

 五線譜という名の線路を辿り、きみと奇跡を探しに行こう。

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ハートボイルド・ダンディ!


ハードボイルドに非ず。ハート・ボイルドだ。
この話は前にもどっかに書いたのだけれど、あらためてもう一度書く。これはいつまでも心の熱い、素敵なある男の話だ。どういう形であれ、ロックンロールを志すものにとっては、ほんとうに舞い上がるような「実話」だ。
昔、テケテケという音のイントロギターが強烈なインパクトを持つ「パイプライン」という曲で流行ったThe VENTURESという名のバンドが居た。もちろん今でも居る。彼らがずっと昔に日本ツアーをやったとき、当時にしては珍しく、まめに東北地方も回った。ライブ会場はたぶんそんなに大きくはなかっただろうが、兎に角あのThe VENTURESが来る、というので、ファンは東北各地からたくさん集った。ライブは雪の降る寒い夜に行なわれるのだけれど、早くから集まった客たちは、既に熱くなっていただろう。

でも、この雪が曲者だった。その日大雪が降り、移動中のThe VENTURESはあと何時間で会場につけるのかわからない事態に追い込まれた。そして、運悪くこの日、The VENTURESの前座をやるはずだったバンドも、また同じ状況にあったのだった。

丁度その頃、コンサート会場近くのある小さなライブハウス「アップル」で、東北地方でも1・2を争うと言われていたひとつのインディーズバンドがライブを始めようとしていた。このバンドはオリジナル曲もたくさん演奏したけれど、The BEATLESやThe Rolling Stonesのコピーも相当、巧かった。編成はヴォーカル・ギター・ベース・ドラム・キーボードで、全員男性、バンドリーダーは一番年上のベーシストだ。このベーシストはもともと東京の人だったが、30歳を超えてから体のいい転勤、はっきり言ってしまえばいわゆる左遷で青森に飛ばされて、感情の持って行き場がなく、たたきつけるようにロックンロールに目覚めた、そういう男だった。当時にしては珍しく、痩躯をぴったりした細身のスーツに包んでプレイした。一度も同じスーツでステージに現れたことがないのが自慢だった。
そんなベーシスト率いるインディーズバンドが、ステージでまさにアンプに電源を入れたその瞬間、小さなライブハウスに報告はもたらされた。

「ここからならThe VENTURESのコンサート会場まですぐ行ける。アマチュアでも上手いと評判の君たちに、The VENTURESが来るまでの、彼らの前座を頼めないか」

行こう、と決めたのは、もちろんバンドリーダーのベーシストだ。こんなチャンスって二度とないと思わないか? でも、The VENTURESを待ちわびて、じりじり熱されてるファンの前にのこのこ出て行くことはとても勇気がいる。ある程度腕がなくては、俺たちの音楽で楽しんでもらうことは出来ない。なにか飛んでくるくらいは覚悟しなくちゃならないかもな。覚悟は俺たちにあるか?

知らねえ、そんなこと! やってみなくちゃ、分かんねえさ!

ライブハウスに集まってくれた客のほうには慌てて事情を説明し、お詫びを言い、肩が雪で埋もれそうな凍てつく雪の中、彼らはすぐにコンサート会場に向かい、そして大舞台に立った。The VENTURESの曲さえやらなければ好きなようにやってくれてかまわない、と言われていたので、片っ端から騒がしい曲を弾きまくった。当時の歌謡曲も5・6曲。わざと出だしを間違えて、メンバー全員でずっこけて見せるお笑い曲も披露した。やりたい曲はいくらでもあったし、波が打ち寄せるようにみんなの手は動いた。最初のうち、まだThe VENTURESは来ないのか、と悪態をついていた客たちも、やがてこのバンドの演奏の確かさと、ひょうひょうとした明るいノリに惹かれていった。
The VENTURESがやっと着きました! と一報が入ったのは、彼らがもう2時間も演奏したあとだった。彼らは演奏を止めて、舞台を降りた。おおきな拍手が彼らを包んだ。絶対にあのときの客たちの拍手は、待ちかねたThe VENTURESがやっと舞台に出てきたときよりも大きかった、と、彼らは今でも思っている。雪はまだ音もなく降り続いていたが、指先までじんじんと熱かった。舞台の上のThe VENTURESは見ないままだった。だって、俺たち、対バンしたんだもんな。見に来たんじゃないんだ。当代きっての人気者、あのThe VENTURESと、対バンしたんだぜ?

やがて色々な事情があって、彼らのバンドは解散してしまったけれど、あの大舞台での興奮と、The VENTURESの写真を撮るはずだったカメラマンが撮ってくれた何枚かの彼らのライブ写真は、とてもいい思い出になっている。

「俺たちはあのとき絶対にThe VENTURESなんかよりずっと、客を楽しませたはずだ」

と煙草に火をつけながら話す、そのバンドのベーシストが私の父だ。父は今でもこの話を何度も楽しそうに繰り返す。大きすぎて圧倒されるような舞台に足を踏み出したときの興奮。いちばん年下で、とにかく緊張していたヴォーカルの声がまろやかに伸びだしたときの歓喜。全てを飲み込んで会場が揺れだしたときの一体感。音楽の、ロックンロールの、生々しい音のむき出しの魂の、その素晴らしさ。

ハートボイルド・ダンディ。
考えてみればこの男の娘が、いままでロックンロールを志さなかったことの方が、ずっとおかしな話じゃないか。
目指すはハートボイルド・レィディ。


ねえ、ロックンロールしよう。
私、ロックンロールがしたいんだ。

コメント

No title

えっ!お父さんの話なの!?ですか!!

...。うむむー。部屋で置物と化しているピアノのふたを開けてみようかなー。だいぶ埃かぶってて、怖すぎて触れないんだけど。
あの頃の、わくわく感を少し思い出しました(遠い目)

mashimaniaさーん!いつか私も握手したい!
(とりあえず関西より両手を振ってみる。見えるかな)

しかし、素敵なお父さんだなあ!驚きました。

No title

こんにちは☆久しぶりに伺えて素敵なお話を読めて、今とっても幸せですっ☆しばらく入院してたのでもー気になっていました。とあるシリーズの続きがあったら・・・と!
今回のもベッド上でじたばたしちゃう素敵な話でした!死にそう☆いつもほんとにありがとうございます!それにしても、とっても素敵なお父様ですねえ♪か、かっこいい!叶うことならばすごくみてみたかったです☆うちの父もバンドをしてて、THE BEATLESと吉田拓郎をよく弾いてました。mashimaniaさんは、とってもすてきでロケンロー!なハードボイルド・レイデイだと思います。あこがれ!

No title

ぷにすけさん
ピアノ弾けるんですか! キーボードはまだ募集中ですよ。たぶんね、ふたを開けると、ぜんぜん弾けなくなった自分にがっかりして苦笑して、そのあときっと「やっぱり楽器はわくわくするな」って思いますよ。
そして、私も握手したーい! こういうとき、地球が平らならいいのに、と思います。そしたら関西で手を振ってるぷにすけさんが、きっと遠くに見えるのにね!

レフュージアさん
に、入院?! どうしました、クロマニウィルスとか……(洒落になってない)「とある」シリーズは2月に入ったのでまたこれから書きます。レフュージアさんの退院を待ってたんだよ!

ロックンロールな父はいまもギターを弾きます。今日も弾いています!

No title

あっ!レフュージアさーーーん!(手を振る)
とあるシリーズなのにレフュージアさん来ないなー。
って、勝手に寂しがっていました...。

お体、お大事に...。

お、おじゃましました。(そそくさと立ち去る)

No title

ぷにすけさんが通りがかりに声をかけているw

レフュージアさんがいらっしゃるかなーと思ってちょっとここで立ち止まって待ってみたけど、ちょっとタイミング悪かったみたいだねえ。きっとまたそのうち来てくれるねえ。そうしたらまた手を振ろうねえ。うん。

No title

あわわ。ご、ごめんね!コメントしづらい書き込みして(笑)
またすぐ、来られるかと思ったのです(汗)機を見てまた手を振ります(笑)

私。あれから、思い切ってピアノを弾いてみましたよ。
...弾けやしないよ(笑)
でも、やっぱり楽しいなーって思えたので、調子に乗って、矢野顕子さんの眠ったままの楽譜を引っ張りだして練習してみようと思います。

No title

うん、機を見てまた振ればいいよ~。うまい具合に疎通ができると、そういうときすごい嬉しいよね。

ピアノ弾いてみましたか! そりゃ、弾けやしないよ。久しぶりに弾いたのにすらすら弾けたら、いかんよ。私なんか1日弾かないとコード忘れちゃうんだよ?!

「やっぱり楽しい」が一番ですね。どんな曲でも、楽器はやっぱり楽しいよなあ。

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