ハ ウ リ ン キ ャ ッ ツ

 五線譜という名の線路を辿り、きみと奇跡を探しに行こう。

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昔々、あるところに。




枕元の灯りをつけてついさっきまでオースターの最新刊を読んでいて、少しうとうとして目を閉じて、もう一度ひらいたら、薄明かりの中、ベッドサイドに真島昌利が座っていた。
「そろそろお休みの時間だよ?」
少し不協和音の混じるやさしいハスキーボイスで、とつぜん普通に言葉を喋ったのでびっくりした。でも、なにも言い返す間もないうちに、手際良く真島昌利は私を仰向けにきちんとベッドに押し込んで、蓋でもするみたいに掛け布団をなおす。
「ねーむれーねーむれー」
似合わない歌を歌い出したのでちょっと笑ってしまった。眠れないよそんなんじゃ、と言ったら、薄闇に浮かぶ横顔を際立たせて、じゃあお話をしてあげよう、と言った。細い指先で、枕元に並べてある本の題名を、ひとつひとつなぞる。とっくにバンダナを外してしまっていて、肩に垂れる髪の毛が、ランプの明かりを透かして栗色だ。
「……今夜はぼくの作ったお話をしてあげる」
そう宣言した彫の深い顔は、横たわった姿勢で見上げると、半分はまるで影に溶けている。高い鼻を不思議な気持ちで見ていると「ほら、ちゃんと眠る姿勢になって、目を閉じる」と叱られ、あんがいに大きな手で目をふさがれてしまう。そうして、上から真島昌利のけだるいハスキーボイスが甘い雪のようにゆっくりと私に降りかかる。

「……題名、ひとりぼっちのニアっち」

ニアっち?! 私?! 私、主人公?! すごい!! でも「っち」はなに?! それ、要る?!

「昔々、ある深い森の奥に、ニアっちはひとりぼっちで暮らしていました」

ニアっち! ニアっち森の中でひとり! かわいそう! それ、とってもかわいそうね!

「……友だちもいなくて、恋人も家族もいなくて、ニアっちは長い間ずーっとひとりぼっちでした」

……ニアっち……かわいそうな子……ぐすん。

「そして、さみしいひとりぼっちのまんま、死ぬまで森で過ごしましたとさ」

……。

「……」
「…………」
「…………おしまい。」


ェェェェェェええええええええええええええええェェェェェェェ! なに、その救いようのないかなしい話! そんなのハスキーボイスで淡々と?! 眠れないよ! ニアっちかわいそうすぎて眠れないよ! いじめ?! 新手のいじめ?! 私はあまりの急な物語展開にガクガクふるえた。
 

「……ニアっちは、まだひとりぼっちなの……?」


おそるおそる小さな声でそう聞いたら、真島昌利の手が私の髪をくしゃくしゃに掻きまわす。

「……しょーがないなぁ」

笑いを含んだやさしい声が、私の意識と体の自由を奪う。全部奪う。でも、



「ぼくが一緒にいてやるよ」



……それがいい。







コメント

No title

ニアさんに添い寝の人魚.いやマーシーかぁ.

あんだけの歌詞がかけるのに物語りは簡潔なんですね 笑
そこがシンプルなロックンローに繋がってるのかも(゚_゚§

No title

ニアさん お早うございます。
もう...今日は忙しいのに。今頃掃除も終えて外出の準備をしてないといけないのに...新作が嬉しくて一気に読んで、もったいないから言葉やキーワードを落とさないように今度はゆっくり読んで、彼らを思い浮かべながら読んで..あ~遅刻だ!
いつも素敵なお話ありがとうございます。
ロックンローラーの中には詩人も作家も含まれますよね。

No title

うう。ニアっち!かわいそ...(笑いをこらえている)

本を読みながら、うとうとするのはいいねぇ。
昔は、集中して一気に本を読むのが楽しみでしたが
最近は、毎日寝る前に少しずつ読むという技を覚えました。
ランプ点けっぱなしで寝て、ましままさとしに、そっと消してもらいたいものです。(いや、叩き起こされるだろうか...)

No title

やっと出張がおわった!かえってきてパソコンをつけたら、なにこれ!!の連続でした。すてきすぎて眠れません。でも、疲れとか憂鬱とか、ふっとんじゃいましたよ。いつもすてきな物語をありがとうです。しかしマーシーが作りそうなお話だなー!うとうとする時間に、こんなことがあったら最高です。私も真島昌利に、ねかしつけられたりたたき起こされたりしたいです・・・。

No title

STEREOHEADPHONEくん
添い寝の人魚、いいねぇ。なんかドキドキした。
最近は、歌詞もすいぶん簡潔なようだけどね、真島氏は。歌詞も物語も簡潔! なのがシンプルで良し!

masibanekoさん
コメントをありがとうございます! 朝からお騒がせしてしまったようで。今回、気合入れて長いものを書いたので、遅刻確定……だったでしょうね……。でも、逃げないってわかってても、いま! いまじゃなきゃだめ! っていうものありますよね。そういう稀なものにこのシリーズが選ばれたんなら、嬉しいな。

もちろんロックンローラーには詩人も作家も含みます。それ以外に絵描きや落語家、あるいは職人も。世界にロックンローラーは案外多いかもしれません。そう思うと、この世もなかなか悪くないものですね。

No title

ぷにすけさん
ニアっち、かわいそうよね?! 

眠るギリギリまで本を読んでるのが好きなんですよね。もう、読めてなくて視界に入る文字の意味が取れてないんだけど、その状態まで読みたい。
たぶん真島昌利は、そっとランプを消してくれるようなことはないでしょう。ぷにすけさんなんか、叩き起こされて「腹が減ったから今すぐカレーを作れ」とか言われてしまえ!

レフュージアさん
出張、ご苦労さまでした。お疲れのところ、長々としたお話ですみません……でも、疲れや憂鬱が吹っ飛んだのなら、書いた意味があったな~。
前からずーっとこの話を書きたかったんですよ。今回、うまいぐあいに挿話として書けてよかったです。

ちなみに「まし☆にあ」のロゴはどこで作ったか聞いてくれた方がいたのですが、これは「らき☆すた」ロゴジェネレーターというので作りました。「らき☆すた」って漫画があるんですよ……すみませんそういうの大好きで……。

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