ハ ウ リ ン キ ャ ッ ツ

 五線譜という名の線路を辿り、きみと奇跡を探しに行こう。

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

オルセー美術館展2010「ポスト印象派」


ありきたりな趣味ですがゴッホとロートレックが身もだえするくらい好きなんです。今回、ゴッホとロートレックももちろん含めたあのオルセーの絵画がまとまって日本に来るということで、いつ行ってやろうかとじりじりしていたのですが、やっと行ってきました。自分では絵は下手で描けないんですが、人の作品を見るのは好きです。1枚の絵から衝撃を受けたり、伝わってきたりするものがあることを知ると、たかが絵じゃないか、とはとても思えなくなりますね。1曲のロックンロールがひとの人生を変えてしまうことがあるように、たった1枚の絵がそういう力を持つこともあるのだと私は信じているのです。

国立新美術館、入場したのって初めてじゃないかしら……待てよ、開館仕立ての頃にデュシャンを見に来た……かな? この建築、大好きです。黒川紀章ってやっぱり素晴らしい建築家だったと思います。あちこちにある彼の手がけた建築物がそのまま、大いなる彼の墓です。

仕事の合間を縫って行った(おいこら)ので、昼過ぎのいちばん混んでる時間だったと思うんですが、それでも国立新美術館は構造自体広いので、チケットも並ばず買えたし、入場規制もなく入れました。もしかしたら土日はもっと混むのかもしれないけれどね。これからは学生さんが夏休みに入ったりするから、平日でももう少し混むかな?

展示方法は「第1章 1886年―最後の印象派」から「第10章 装飾の勝利」まで、印象派以降の絵画について、主義や派閥ごとにまとめて展示していく方式。たくさん展示物がある場合はこういう主義ごとに別れた展示のほうがわかりやすいですね。私もたいして絵について詳しいわけではないんですが、まあ感想などをだらだら書いておきたいと思います。言及する絵についてはこちらの「作品紹介」でほとんど見られるので、合わせて見て頂くとわかりやすいかもしれません。

まず「第1章 1886年―最後の印象派」の目玉はドガの「階段を上がる踊り子」。動画をストップ・モーションにかけたかのような構図で、まさにそれまで絵画では描くことが難しかった「時間」さえもなんとかカンバスに写そうとしたのだなあ、と思います。ドガやマネ、印象派後期の作家たちは「見えないもの」「触れないもの」さえも描きたかったんでしょうね。霧やもや、煙、光、そういうものに対しての憧れがとても強いし、何度もモチーフにしています。私は印象派っていままでピンとこなかったんですが、今回初めて彼らの「見えないものさえも描きたい」という衝動に触れたような気がして、構図や技術としてはやっぱりそんなに好きではないんですが、柔らかな色調からひしひしと伝わる思いは感じ取れたような気がしました。
この「見えないものさえも描きたい」と気持ちがひとつの絵画技法として結実するのが「第2章 スーラと新印象主義」ですね。たくさんの色を重ねた光学的理論をもとにした点描画の人です。スーラは光を描きたかったんですね。スーラの絵は前に何かの展覧会でまとめて見たことがあって、そのときはスーラばっかりたくさん見たので比較対象がなくてわかんなかったんですが、点描画って、点描の粒がそろいすぎると砂絵みたいになるんですね。砂絵ってわかってもらえるかしら、いろんな色付けた砂をのりを塗った紙に貼りつけて絵を描くアレです。点描画も今回みたいにいろんな人が描いたやつがそろうと、スーラのものが確かにいちばん鮮やかで、ほんとうに艶やかにまぶしくて、透けるようにさえ見える、ということがわかりました。
「第3章 セザンヌとセザンヌ主義」。私、静物の大家であるセザンヌってまったくもってよさがわかんなかったんです。「生きてないものを生き生きと描いてるからいいのかしら」とか思ってて。ちゃんと観たのも今回が初めてです。そしたら、ぜんぜん生き生きとしてないのね。全体的にのっぺりとしていて、どうも平面的で、果物や野菜もちっともおいしそうじゃないし、なんか不機嫌そうで。イメージと違ったので「あれえ」と思いました。だからまだセザンヌについては考え途中なんですが、それまでの画家たちがね、煙とか、光とか、留められないものさえカンバスに描こうとして奮闘したなら、セザンヌは、反対に「動かないもの」を題材にして(いや、実際は果物だって腐るけども)完璧な永遠性のようなものを描きたかったのかなあ、と思いました。
お待ちかねの「第4章 トゥルーズ=ロートレック」。好き好き大好き。前も六本木でロートレック展があったときも意気揚々と観に行きました。このときとそんなにロートレックに対する考え方は変わっていません。とても欲望を感じる絵です。それなのに、とてもはにかみ屋で、ひとの視線に恐怖を感じる人の絵です。今回オルセーから来ているロートレックの絵は3枚だったんですが「黒いボアの女」ね、大好きなんですよ。なんだろう、もうほんと、震えるくらい好き。私、彼の絵、まさにロックンロールだと思うよ。
「第5章 ゴッホとゴーギャン」。いちばん混んでいたゾーンです。ゴーギャンは去年のちょうど同じ時期に「ゴーギャン展」見たんですよ。ゴッホ展も確か3年前くらいに日本でやったときに観に行ってる。だから、今回来てた「アルルのゴッホの寝室」はたぶん以前も観たと思う。相変わらずゴッホは遠近感から構図からなにもかも間違っているのだけれど、それでも明らかに「いい」んだよな。天才だな。天才としか言いようがないもの。ホントに彼にはこんなふうに世界が見えてたんじゃないかしら。だとしたら、きっとずいぶん彼にとって世界というのは生きにくい場所だったろうなあ。
さっきも言ったけれどいちばん混んでた絵というのがこのゴッホの「星降る夜」ですよ。紺いろの空にはでっかく北斗七星が輝いてさあ、明らかにウソっぽいというか、有り得ない絵なんだけど、ゴッホがさあ「これ、こういう景色、俺見たんだよ、本当なんだ」っていったらさあ、私、信じるよ。ウソだけど、本当なんだよ。そういうことってあるんだよ。だからゴッホってすごいよな。なんとなくスカパラとヒロトさんの歌を思い出しちゃったよ。題名が似ているんだもん。
「第6章 ポン=タヴェン派」「第7章 ナビ派」のあたりは、しっかりと縁取りをした絵にわりと鮮烈な色を載せる技法を使った絵が多くて、なんだろ、ごく初期の宮崎アニメみたいな。いろいろ試行錯誤してさあ、色の微妙な感じとかを突き詰めたあげくに、思考がとうとう「もっと単純にすることで新しい道が開くんじゃないか」に行き当たったんだろうね。樹がぜんぶ緑、雲の色は同じ白、みたいな、目に見えるものを目に見えたままではなく、どんどん端的にばらしていったような、ほとんど抽象画みたいな絵もあって面白かったです。
「第8章 内面への眼差し」。もはや絵も心理学だな。絵というものが宗教に密接に絡んでた時代からずいぶん遠くに来たなあ、と思うよ。そういう神話のようにドラマティックではないふつうの人々の生活の内部にこそ「物語」を感じて描いたような作品が多いです。目を惹いたのはモローの「オルフェウス」で、これだけ目だって古典的な手法で描かれてるんだけど、神話に題材を取ったようでいて、なんとこの絵は神話では描かれていない場面(勝手にモローが創造した)を描いたんだそうよ。ついに神話の創造まで来たということですね。
「第9章 アンリ・ルソー」がすごかった。初めてルソーの絵を見たからびっくりした。私の中では今回いちばんの体験。絵の展示は2枚だけなんですが、独特の筆致・色遣いでまるで絵本の挿絵みたい、強烈! ルソーは想像で南国の花とか木とかを絵に描いたそうで、絵というのは基本的に「体験」(=目の前に描きたいものがあって)で描くもの、という根本的な約束すら打ち破っちゃったシロートが登場だ!(ルソーはあらゆる意味で独学でで自分の絵を完成させた人だったそうです)ここにきてついに神話の創造どころか、まるで想像で絵を描きあげちゃうひとが現れたんだもん、当時としても画期的だし、なかなか認められなかったろうな、と思います。でもほんとうに鮮烈な絵だよ。ハッとさせられる。
「第10章 装飾の勝利」では絵が総合芸術の一部となっていったというのがよくわかる感じね。もうきまりきった四角いカンバスではなく、部屋にはめ込まれる装飾の一部として、壁の色とか、壁の素材とかまで考慮に入れて、まるで絵が枠を超えて広がって行くような感覚を抱かせる作品が多い。

いつの時代もいつの作家たちもそれぞれに絵というものの可能性を探っているのね。みんなものすごく真剣に「描きたい」「もっともっと描きたい」と思っていて、そういう人間同士はちゃんとつながって行く。あいつがこいつを評価した、とか、こいつに認められてあいつが世に出てきた、という話がそこらじゅうにあって、きっと彼らは集まっては「これからの絵画の方向性」なんかについて、真剣に議論していたのだろうなぁ。あきれるほどばかばかしく本気で渡り合ったりして、でも、そういう空気そのものが、何より羨ましいと思ったなあ、私は。

ゴッホとロートレックの絵のポストカードを買いました。あの人に手紙を書こう。やっぱり絵は素敵です。

コメント

No title

ルソー!!!すきだー。(くわしくないけど)
「眠れるジプシー女」が好きです...。
南国の植物とかが印象的なのに...想像なのか。
想像であんなの描いちゃうのかー(ため息)
勝手に南国に住んでる人なんだと思い込んでましたよ。

ほんとに、どんな風に世界がみえてたんだろうねぇ。

No title

10月からゴッホ展があるんですね。
只今、CMをやっておりました。
先日、夜中にモネの庭を假屋崎省吾が訪れて庭仕事する番組やってたんですが、全て計算されていて綺麗でした。何の花をどんな色の花をここへ、あそこへ植える。もう、絵そのものです。しかも、近くで見るとなんでこんな赤をここへ?って思うのに、通路から引きで見ると完璧!そんなセンス今からでも養えるかな??w「怖い絵」ってシリーズの本ご存知ですか?中野京子さんという方の。3冊出てますが、私大好きでこの本。素人にはおもしろかったですwルネサンス期とかバロック期が多いですが...。
私は、8月に帰省したらブリューゲル展を見に行こうと思ってます。大好きな画家です。ゴッホも好きだよ?イカレチャッテル感じがね!

No title

これ!行きたいんですよ~。
私は印象派の光の表現が好きです。無色でもなく単なる濃淡でもない、光というものを描いたことがスゴイ。
ロートレックというと私のイメージはいつも「黒」で、絵からタバコや酒や人間の匂いがしてくるような、そんな印象なんです。本物見てみたいな。
先日ユトリロ展を見に行ったんですが、ユトリロの母親はロートレックのモデルだったんですね。つながりが面白い。

No title

ぷにすけさん
おお、ルソー好きなんですね! 鮮烈な色彩ですよね。このオルセー展の中では、実際に南国(タヒチ)に住んで絵を描いてたのはゴーギャンなのですが、ルソーの絵のほうがね……南国っぽいんですよね……。想像が現実を上回ることってあるんですね。

ブチさん
またゴッホ来るんですね! わくわく。モネの庭の番組も面白そうだなあ。色の組み合わせってほんと不思議ですよね。もっと感覚豊かな人間になりたいものです。「怖い絵」シリーズ知ってますよ! 私も絵について書いた本、好きなんです。

ammoniteさん
行くといいと思う! 最近の企画展の中ではとてもわかりやすい展示をしているので、お勧めです。ロートレックは本当はムーラン・ルージュのポスターがいいんですよ。かっこいいのよ。
ユトリロもいいね、好きです。ちょっと青っぽい、さみしい感じのする絵だな、と思った記憶があるなあ。絵は面白いですねえ。

No title

なんて羨ましい・・★私もゴッホ大好きです。いちどでいいから、ほんものを間近でみてみたいです。ロートレックも、すっごくいいですよねえ・・。あの大人っぽい、モダンなパリそのものを現してる様な感じがすきです。とうきょうが羨ましいよう。私も今日美術館に行ってました!小泉八雲展・・・。美しい悪夢みたいでしたよ~★ルソーの南国っぽさ、私もかなり同感です!

No title

私も絵を観るの好きです。
印象派~20世紀初頭くらいの絵画は面白いですよね。
マティスとかデュッフィのフォービスムあたりの絵が特に好きかも。
描き手の情念が溢れ出てるようなのが好みです。
だから、ゴッホも好き。
彼の目に映る世界は、ギラギラと狂おしい生に満ちていたのでしょうね。
うん、たしかに、生きていくのがしんどかっただろうと思いますよ。

平日昼間に時間があるなら、出光美術館がオススメです。
もう何年も行ってないけど、すごく気持ちのいい空間なのですよ、見晴らし良くて。
展示品は水墨画とか陶磁器がメインですけどね。

No title

絵は芸術学でキリスト教に関する宗教画をたくさんみたくらいしか・・・知識0です。
宗教画ってかなり面白いですよね。よくできてんなあって感じ。聖書と照らし合わせるとより面白くなります。
そしてわたしもブリューゲル展に行きたいのです!電車で広告見て行こうって決めました。単純笑

No title

レフュージアさん
絵って本で観ることもできるんですけど、絵具の重なりとか筆さばきはやっぱり現物を見ないとわからないんですよね。ゴッホは特に、絵を目の前にしたとき圧倒的なパワーを及ぼすように思います。
小泉八雲展、なんかすごくレフュージアさんらしいな。ハウリンキャッツには本も絵も好きという方が多くいらして、とても嬉しいです!

nemuriさん
マティス、いいですね。青がきれいですね。「マティスの窓から 忍び込んだなら 群青のギター こっそり鳴らそう」ってどこかのギタリストが詞を作ってましたが、すごくよくわかりますね。
陶磁器などはあんまり見ないので、出光美術館は行ったことないなあ……よし、今度行ってみよう。私は文学館関係も好きです。世田谷文学館とかね、雰囲気いいんですよ。

No title

か さん
絵画は宗教画から始まってるんだと思うよ。どんな画家も一度くらいは宗教や神話をモチーフにして描いた絵があるものね。絵をただ「きれいだなあ」って眺めるものもちろんいいけど、確かに聖書を知るとより面白くなったりもするよね。

ブリューゲル展、人気! 確かにあの細密な版画は素敵。ブリューゲル展は7月17日からBunkamuraザ・ミュージアムにて!(回し者)

No title

気がふれそうな激務の中におります。
昨日、久しぶりに職場と家以外のところに出かけました。
ZEPPってとこなんですけどね。
美術展…そんなステキなものがこの世にあって、
それを楽しめる人がいるのだなぁ。
チクショウ!羨ましくなんかないやい!
で、
私は絵を語るとウゼエので語らないのであった。
私の絵はあまりロックンロールではないのであった。

No title

tokageさん
ZEPPってフェイマスなロックンロール・ミュージアムじゃないですか。最近では「ザ・バースディ」の企画展示をやっていませんでしたか。こちらのZEPPではその展示物は大層人気で、満員御礼だそうです。チクショウ! 羨ましくなんかないやい!

って言ってたら、一昨日くらいに酔っぱらったひとたちに「ニアちゃんも福岡に住めばいいじゃん!」「そうだよ!」ってサラリと言われて衝撃を受けました。その考え方は見事にロックンロールだと思って感心しましたが、電話の相手はその他はうわごとのように「チバ~チバがモフフフッ」などと繰り返すばかりでお話になりませんでした。あれ、いったい誰だったんでしょうね。

No title

やっと行ってきましたオルセー美術館展!今日は10時前に開けてくれたので、9:40ぐらいから待ち時間ゼロで見られました。ラッキー。にあさんイチオシのロートレックもしっかりと見てきましたよ。何だかこっちが覗き見しているような感覚を覚えました。そしてやっぱり、何か独特の雰囲気と不思議な魅力がありましたね。ゴッホの星降る夜は格別でした。ゴッホは何度見てもいい!いつまでも見ていたくなるので額絵を買ってきました。10月のゴッホ展も楽しみです~

No title

ammoniteさん
行ってきましたか! 待ち時間ゼロ、それはラッキーだったね。ロートレック、線も荒いし、ざっと描いたように見えるのに、すごく重圧を感じる絵だよね。あの、ちょっと悪いことしているみたいな雰囲気が好きなんだよ~。
「星降る夜」やっぱり、なんといってもいいよね。私もロートレックと一緒にポストカード買いました。私も10月のゴッホ展が楽しみだな~。

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://howlincats.blog114.fc2.com/tb.php/442-3cbb24a9

 | HOME | 

Calendar

« | 2017-09 | »
S M T W T F S
- - - - - 1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30

Monthly

Categories

Recent Entries

Recent Comments

Recent Trackbacks

Appendix

ましま にあ

ましま にあ

Hey ho,let's go!

ましまにあと直接連絡を取りたい方は
mashimania(´・ω・`)hotmail.co.jp
(´・ω・`)を@に進化させて下さい!

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。