ハ ウ リ ン キ ャ ッ ツ

 五線譜という名の線路を辿り、きみと奇跡を探しに行こう。

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はる、みじかし。




シリーズ化しすぎて、収拾がつかなくなってきたぜ!

とある聖夜の甲本浩人
とある年始の甲本真島
とある睦月の甲本浩人
とある大寒の甲本真島
とある立春の真島昌利
とある猫の日の甲本真島
とある誕生日の甲本浩人
とある発情期の真島昌利
とある皐月の甲本浩人
とある新居の甲本真島
とある文月の甲本真島
とある真夏の甲本真島
とある中秋の甲本浩人
とある神無月の甲本真島
とある霜月の真島昌利
とある年始の甲本真島Ⅱ
とある睦月の甲本浩人Ⅱ


春というのも、なかなか難儀だね。

春は曙。

薄く生クリームを伸ばしたみたいな雲がかかる明け染めの空の色を見ながら、ふと、中学生のときに習ったそんな古文の文句を思い浮かべる。春は曙がよい。でも、終わらない仕事のせいで出勤がどんどん早まっていって、いつの間にか曙を見るようになってしまいました、というこの状況では、風情も何もない。3月に入ったとはいえ、まだまだ寒いから、私は歩きながらコートの襟を合わせる。あー、と思わず声を出して大きくついたため息だかあくびだかわからない吐息は、ひゅるひゅると渦を巻いて白くなる。

春は忙しない。

3月いっぱいで退社する同僚が2人いる。通常でもあわただしい年度末に、引継ぎ業務がのしかかってきて、厳しい。しばらくはこうして出社時間を早めて対応するしかないのだと思う。わかってはいるけれど、そのうちまた楽になるんだとわかってはいるけれど、やっぱり連日の残業に加えての早い出勤はつらい。目覚まし時計をどうにか止めてベッドから這い出ると、たいてい隣で寝ている甲本ヒロトも一緒に目を覚まして、おきてくる。寝ててもいいよと言うのを無視してリビングの椅子にひざを立てて座り、出かける準備をする私をただ見ている。きょうはがんばって7時に帰るからね、と希望を言うと少し微笑む。でも、その約束は結局、あんまり守れていない。ちかっと光る一等星のような甲本ヒロトと真島昌利の笑顔を、遅く帰って見るのはちょっと切ない。
仕事がたまってたまって仕方ないときは休日出勤もする。普段、わりあいに決まった時間に帰れる分、そういう忙しいときもあるのだと納得はしているものの、自分の体が泥水になったような気がする。重くて、何もやりたくなくて、それでもゆっくりと流れている。そういうものだ、と口の中で繰り返す。休日の夕方に鬱々しながら家までの道を歩いていると、活気に満ちた商店街で不意に声をかけられる。甲本ヒロトと真島昌利が大好きな公園でよく会う知り合いだ。彼女はきょろきょろと甲本ヒロトと真島昌利を探す。今日はいないんですよ、私、仕事で、と申し訳なく思って言うと、あっそうなんですかごめんなさい、と慌てたように返事した。それから首をかしげてちょっと笑った。いつも一緒だから、いつも甲本ヒロトと真島昌利と一緒にいるから、何か、すこし変な感じ、と小さく言った。私も、いまどうしてここに甲本ヒロトと真島昌利の姿がないのだろう、と思う。繋いでるはずの右手には古びた通勤用のかばん。ほんとうに欲しいのはこれじゃない。こんなものじゃない。すごく足りない感じがする。自分が不完全で、あまりにも頼りない感じ。こんなに愛しいのに。こんなに好きなのに。どうして一緒にいる時間が少ないんだろう。

春は寂しい。

明日も仕事。いつもの休みの日の夜みたいに、湯船におもちゃを浮かべたりして、思い切りはしゃぐためにたっぷりと時間をとったお風呂に入れてあげられなくてごめんね。先にお風呂から上がった甲本ヒロトが珍しく自分でちゃんと髪を乾かして着替えを済ましている。ヒーターも自分でつけて、いつも言うように湯冷めして風邪なんて引かないようにその前にちゃんと座り込んで、レコードを聴いている。細い針金みたいな後姿。ほんとうは何だってぜんぶしてあげたい。甲本ヒロトと真島昌利にかかりきりになって、体を洗って髪を洗って濡れたままはしゃぐのを叱ってタオルで包んで拭いて、ごしごし拭いて、髪をきれいに乾かして整えて、その間中くだらないことをひっきりなしにしゃべりかけて、私がいなければなにもできないふりをしてくれる甲本ヒロトと真島昌利をさんざん甘やかしたい。自分のことより甲本ヒロトと真島昌利のことを思って暮らしたい。甲本ヒロトはいつもなら大音量で部屋中にかけてるレコードを、今夜はヘッドホンで聴いている。甲本ヒロトはとてもやさしい。やさしさは春の雨みたいにちくちくと私の胸にたまる。そんなにやさしくなくていいんだよ。わがままとか言って、この状況が気に入らないっていう態度を取りなよ。私のこと、もっと理不尽に責めていいよ。なんで急に、こういうときだけ、私よりずっと大人の顔するの。その思いは、あふれる。音もなくあふれる。

春は静謐。

私は声を出さずに泣いてしまう。あらあらあら、と思う間に、涙がどんどんあふれて落ちる。なんだろ、いったいなんで泣いているんだろ。よくわかんない。でもなんかつらい。なんかって何。なんかこうやって見事に静かなのもつらいし、イヤだ、もう疲れた。自分の中だけで私は自分自身と饒舌にやり取りをしている。そこにこれからお風呂を使おうとしたらしい真島昌利が猫みたいに足音を忍ばせてやってきて、立ったまま泣いている私を見つけてわずかに立ちすくむ。ちょっとひとの悪い笑みを唇の左側に浮かべる。お風呂上りでタオルがかぶさったままの私の顔を執拗に覗き込もうとする。真島昌利に見られたのに涙が止まらないのが恥ずかしくて、両手をつかまれても顔を背けようとしているのにあの丸い目でわざと顔を凝視してくる。せっかくお風呂に入ったのにまた顔がぐちゃぐちゃだ。しっかり両手をふさがれているのでぬぐうこともできなくて、余計にぐちゃぐちゃだ。やっと、うぇぇ、と鳥が絞め殺されるみたいな変な泣き声が喉から出た。いじわるな真島昌利はそれを聞いてこらえきれずにまたちょっと笑う。そっと私の手を離すと、タオル越しに頭の上に両手を置いて、まだ濡れている私の髪を拭いてくれる。その間も、引っ込みが付かなくなって、私はずっとうぇぇ、うぇぇと泣いている。コンタクトレンズが涙にまぎれて落ちた。でも、もうどうでもいい。真島昌利が丸い目を細め、私と視線を合わせると、まじめ腐った顔で自分の胸を指す。首を傾げる。それからTシャツの右肩を指す。首を傾げる。後ろ向きになって、肩越しに振り返って目くばせする。やっと意味がわかる。どこで泣きたい? 胸? 肩? それとも背中? どこだって貸してあげるよ。

春は温い。

少し戸惑いながら、それでも額をそっと寄せた真島昌利の肩甲骨。すなおな背骨に私の横顔がぴたりと沿う。背中を向けたままじっとしていてくれる真島昌利の体温と鼓動があたたかい。私の涙が吸い込まれていって淡い色のTシャツにアシンメトリな模様を残す。そんなにやさしくなくていいんだよ。わがままとか言って、この状況が気に入らないっていう態度を取りなよ。僕たちのこと、もっと理不尽に責めていいよ。なんで急に、こういうときだけ、ひとりでずっと大人の顔するの。さっき自分が言ったことを、真島昌利にそのまま言われている気がした。毛が長くてくすぐったい首筋に顔を擦りつけると真島昌利の匂いがした。あったかいお日さまと、みんなで使っているシャンプーと、洗剤なんかが交じり合った匂い。ぬくい匂い。あったかいなあ。ありがとう。華奢できれいな肩甲骨の上で私を泣かせてくれて、ほんとにありがとう。

春は来る。

もうすこしして仕事がひと段落着いたら、みんなであの公園にお花見に行こう。忙しくてできなかったこと、たくさんたくさん取り戻そう。だから一緒にいてね。私の忙しいときも、散々遊べるときも、楽しいときもちょっとダメなときもそばにいて。甲本ヒロトも、真島昌利も、やさしいね。ほんとうにやさしい。これからきっともっと素敵な季節が来るね。ほんとうの春が来るから、たくさんはしゃごう。コートを脱ぎ捨てて、手袋やマフラーも打っちゃって、笑いながら歩こう。

春を掴んだ。

ぎゅって、真島昌利の体に手を回した。目を閉じたままで。真島昌利の背中に頬をつけて。同じほうを向いている。南か北か東か西か、そんなことはわからないけれど、とにかく前を。前を向いて明るいほうへ進もう。

きみはあたたかい。
いま、春は私の手の中にある。

もう私、泣いてないよ。

少し照れくさくて、背中を向けたままの真島昌利にありがとうと言った。返事のつもりか首をゆすって、真島昌利は振り向きもせずにそのままバスルームのほうへ歩いていった。

春は。

洗面所で顔を洗って、リビングに戻ると甲本ヒロトがいなかった。でも、寝室からごそごそ音がする。何の気になしにドアを開けると、素っ裸でいままさにTシャツを履こうとしていた甲本ヒロトとばっちり目が合った。全裸のままで、とても人懐こく甲本ヒロトが笑った。砂糖菓子のように顔中が溶けて崩れるような、その笑顔。手にしていたシャツを放り出し、じりっ、と間合いをつめてくる。胸の前にそろえた手が、なんだかいやらしい感じにくねくね動いている。見えてはいけないはずの場所があからさますぎる。


そうだった。



春は。



春は発情の季節。
こっちの事情なんか、こっちの状況なんかまるでお構いなしで、それはいきなりやってくる。



「待ってそれ待って発情期ちょっと待って、せめて仕事がもうすこし片付いてからにしてーーーーーーーーー!!」



コメント

こんにちは~。きゃあ、楽しみにしてました!
今回のお話、やさしいかわいいやわらかい です

真島昌利の背中をリアルに想像しすぎて、やたらとどきどきしました。薄いけど広そうな、素敵な背中。
オチの甲本ヒロトには吹きました、この後何があったのか……気になります

発情期…今年もやって来ましたね!
とりあえず、甲本ヒロトのお相手を存分にしてあげてくださいっ。
その間、真島昌利は私が(ry

毎回まいかい、にあさんの真島昌利の体の描写が生々しくてエロくて素敵です。
はぁはぁはぁが止まりません……←


夏を題材にしたもので、たまらなく美しく、そしてどこか切ない気分になる そんなものはいくつか知っていますが、
春 で、こんなにも切なくてもどかしいような気持ちになったのはないかもしれない。と思いましま。まる。

凛華さん
読んでくれてどうもありがとう! 背中好きなんですね、いや、前面も好きですけどね。さいきん甲本ヒロトが完全にオチのいいところをぜんぶ持って行くようになって困ります。

かるちゃん さん
今年もやってきましたよ。去年の有様を思い出すと、しばらく攻防に明け暮れることになりそうです。かるちゃん さん、どうぞ甲本ヒロトをかまってあげて下さい。真島昌利は私が責任を持って……!

かるちゃん さんが書いて下さったとおり、夏はもちろん素晴らしくて切ない季節ですけど、春もなかなかきれいで、そしてもどかしい季節だったりするなあ、と思って書きましま。まる。

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