ハ ウ リ ン キ ャ ッ ツ

 五線譜という名の線路を辿り、きみと奇跡を探しに行こう。

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ゲームのルールは無限大、きみ次第。




お盆前に書き始め、8月24日に仕上がりました! 夏休みの宿題だったら、かなりいいペース! ちなみに夏休みの宿題は、綿密な計画を立てて、始業式の日の夜にやっていたタイプです。2~3回なら「忘れて来た」という言い訳も有効だから大丈夫! そのまま冬休みまでしらを切り通せ!



とある聖夜の甲本浩人
とある年始の甲本真島
とある睦月の甲本浩人
とある大寒の甲本真島
とある立春の真島昌利
とある猫の日の甲本真島
とある誕生日の甲本浩人
とある発情期の真島昌利
とある皐月の甲本浩人
とある新居の甲本真島
とある文月の甲本真島
とある真夏の甲本真島
とある中秋の甲本浩人
とある神無月の甲本真島
とある霜月の真島昌利
とある年始の甲本真島Ⅱ
とある睦月の甲本浩人Ⅱ
とある弥生の甲本真島
とある卯月の甲本真島
とある皐月の真島昌利
とある水無月の甲本真島
とある文月の真島昌利


もすこし涼しくなるかしら、と期待を込めての、残暑お見舞い申し上げます。




甲本ヒロトと真島昌利が奇妙なゲームに勤しんでいる。

こつこつと集めたレコードのEP、つまりシングル盤が20枚ほど。それを持ち出し、トランプのように同じ枚数ずつ配っては各人の前に積み上げ、向かい合って手持ちのEPから数枚を選んで出す。出す枚数はそのときによって様々だが、3枚をこえるのは見たことがない。一気に3枚を場に出すこともあれば、まず2枚出して、そのあと1枚を付け加えることもある。相手の出したEPに、重ねるようにして自分の手持ちのEPを置くこともある。様子をうかがっていると、どちらかがひどく喜び、どちらかが床を転げまわるようにして悔しがっているので、はっきりした勝ち負けがあるのだろうが、私にはまったくルールが呑み込めない。いちど勝負がつくと場はいったん払われて、また手持ちのEPからレコードを選んで、場に出す。が、将棋のように、払われたレコードがまた場に復活することもある。
何度か甲本ヒロトが気を回したのか、横で見ている私の前にもレコードを配ってくれたけれど、とりあえず恐る恐る場に出してみたゾンビーズ「好きさ好きさ好きさ」のシングル盤は甲本ヒロトと真島昌利からするとえらく見当外れだったようだ。苦笑交じりに私を見て頭をかく甲本ヒロトと、きゅうに自分の持ちレコードを検分しはじめる真島昌利の澄ました顔を交互に見て、やるせない気持ちに襲われる。さっき真島昌利がこのシングルで勝っていたと思ったから、ゾンビーズのシングルはトランプにしたらたとえば数の大きいクイーンとかキングのようなものなのかと自分なりにあたりを付けたのだが、このレコード・ゲームのルールはそう単純ではないらしい。

手持ち無沙汰で、思わず、つまんない、と声に出してしまう。シングル盤をそれぞれ出す途中でぴたりと止まった甲本ヒロトと真島昌利の手が、私の伏せた眼の先にある。ああ、甲本ヒロトと真島昌利はひとつのゲームに一喜一憂、本当に楽しんでいるのに、自分が仲間に入れないからって、横からつまんないなんて言ってはいけない、と焦りながら、もう口に出したものはしょうがないよ、この際もっと言っちゃえ、だってそれがホントの気持ちなんだから、とせっつく思いも確かにあった。さっきまで勢いよく場に出されていたシングルは、私の言葉を聞いて、いやにうろうろと空中で迷って思いあぐねた挙句、こっちを盗み見るようにそうっと差し出される。甲本ヒロトも真島昌利も私にひどく気をつかい、それでもゲームはやめられないほど面白く、うん、つまりこの場に必要ないのは、めんどくさいやつだなって思われているのは、残念ながら私のほうで。


……私が甲本ヒロトと真島昌利を養っているのに、どうして私を抜きにして楽しいことをするの?


あまりに理不尽で傲慢な、どろどろしたそんな思いを、こうして吐き気がするほどきっちり言葉に変換できてしまったとき、意地悪で卑屈な自分がひょいと顔を出してきて、ものごとをかき回す。感情こそが、最も手のつけられない暴れ馬だ。

「あーあ、つまんない。散歩でも行こうかな。別に一緒に来なくたっていいよ、私抜きのほうが盛り上がるでしょ」

うつむいたままもじもじしている甲本ヒロトが手に持っているレコードの袋から、ころりと中身が転げ出て、うまい具合にそのまま転がっていく。キース・リチャーズの歌う「ハーダーゼイカム」。黒い車輪のように、くるくるキッチンのほうまで走って行って、ぱたりと倒れたそのかすかな音がいやに大きく部屋に響いた。わざと勢いよくスカートの裾をさばき、音を立てて私は立ち上がる。すがるような眼をしている甲本ヒロトのほうをわざと見ない。


玄関のドアを後ろ手にバタンと閉めて。


部屋の中に甲本ヒロトと真島昌利を残して私は振り返らずに早足でどんどん歩く。きっと、空気が悪いのは最初のうちだけで、すぐにまたゲームは始まるんだろうと思う。仲がいいから。甲本ヒロトと真島昌利は、仲がいいから。そこでしか通じないことばで話し、そこでしか見えない同じものを見て、そこでしか触れない同じものに触れているから。甲本ヒロトと真島昌利のルールは共通していて、そして、私ひとりが別だから。

最初はいまいち打ち解けなかった甲本ヒロトと真島昌利を見つめてきたのは自分なのに。つまらないことで喧嘩するのを仲裁したのは自分で、テーブルのあっちとこっちに甲本ヒロトと真島昌利が座って唸りあっていたときには、どちらのだいすきなものもちゃんと入った折衷メニューである豆カレーを作ってやって、仲直りをさせたのは自分なのに。

「……つまんないっ」

まったく、こんなことで腹を立てるなんて馬鹿げている。なのに、地中に埋まったジャガイモみたいにくだらない記憶ばっかり連鎖して思い出す。中学生のとき、小学生のころから友達だった子を、新しいクラスでできた友達に会わせたら、いつの間にかそっちのふたりのほうが仲良くなっていたこと。大学時代の仲良し4人組が、もうずっと私を抜いた3人で会っているらしいこと。中学生のときのあの子たちは、のちのちまでお互いに親友と呼べるほど仲が良かったのだし、大学時代の友人たちは、私以外みんな結婚しているから、私とは会う時間帯がなかなか合致しにくい。きっと、みんなだって別に仲間はずれにしたとは思っていないんだろう。ちゃんと解っている。こんなことをいつまでも思い悩むのは下らない。わかっているのに、ぜんぜん気になんてしていないのに、時々ぐっとのど元までこみ上げてくるこの寒々しさは何だろう?


いつも散歩で来る公園に人気はなかった。8月前半まではうだるような暑さが続いていたが、お盆を過ぎてきゅうに涼しくなり、夕方を迎えるこのくらいの時刻には少し肌寒いほどだ。半袖のシャツワンピース1枚のままで飛び出してきた私は、ベンチに腰かけて両腕を抱え込み、擦る。

「つまんないよ……」

なにがつまらないって、いちばんつまらないのはきっと自分自身なのだ。甲本ヒロトと真島昌利の中の良さに、私はやきもちを焼いている。もっと自分を気にかけてほしくて、ちやほやされたくて、中学時代のあの子たちにも、大学時代のあの子たちにも、子供っぽいやきもちを焼いている。しゅわしゅわと胸の底から湧いてくる苦い感情。湧き上がってくるのがソーダやコーラなら、きっともっと、じょうずにみんなの中に交じって笑っていられたのに。

誰もいないのをもういちど確認し、ベンチで行儀悪く膝を抱えて、立てた足に顔をうずめる。いっそ声を上げて泣いてみようか少し迷ったけれど、いまさら泣くのもばかばかしいような気がした。甲本ヒロトや真島昌利は今頃どうしているだろう。夢中でゲームを続けているだろうか。あのゲーム。私がぜんぜんわからない、彼らだけの、理解不能なあのレコード・ゲーム。


……ああ。


だから、羨ましかったんだな。



たったひとりでいい、私の話すありとあらゆる言葉がかんぜんに通じる人がほしかった。誰に理解されなくても、ただひとりの人が両手を広げて待ってくれている世界が私はほしかった。甲本ヒロトと真島昌利のいる場所こそが、もしかしたら私の居場所ではないかと、私はそう自惚れていたのかもしれない。自惚れていたかったのかもしれない。それは甲本ヒロトと真島昌利の居場所で、私の場所ではないのに。


足元の地面にどこへも行けずにぴたりとはりついて、ながくのびたベンチと自分の影をぼんやり見ている。世界と私はこうして線で隔てられている。行ける場所なんてないのに、遠くへ行きたいなあと思う。自分探しとか、ありのままの自分を受け入れてくれる場所探しとか、その思考自体があまりに幼くて、ただの拗ねたおこさまで、我ながら笑える。


不意に。


目の前に、暗闇。


ばさっと音を立てて落ちてきたそれは、重く、なつかしいにおいがした。


(きみはね、)

(すぐにゆれる)

(すぐにおちる)

(すぐにまよう)


慌てて闇をかき分けて後ろを振り向けば、そこには顔中をくしゃくしゃにして笑う甲本ヒロトが気配を消して立っていた。私の頭から被せたのは、甲本ヒロト愛用の黒い革ジャンパーだ。クローゼットに仕舞ってあったのを、引っ張りだして来たらしい。少し、虫除けの匂いがした。あったかい、と思った。



(でもね、)

(なんど迷っても、)


(みつける。)



「なんで……」

と言いかけたら、色の剥げたベンチの後ろから長い手を伸ばし、細い体に思い切り体重をかけて、革ジャンパーの上から甲本ヒロトは私を抱きしめた。私の頭のてっぺんに自分の顎をおいて、じっとしている。革ジャンパーの合わせ目から覗く、足元に伸びた私と甲本ヒロトの影が一気に重なり、まじりあうのが見えた。ふたつの影が重なった場所の色は、ほかの影よりいっそう黒々と濃い。

それで私は、やっと少し泣いた。抱きしめられたまま、革ジャンパーの中で、ほんのひとしずくかふたしずく、甲本ヒロトに見られないように泣いた。でも、甲本ヒロトは私が泣いたのを知っていたのかもしれない。抱きしめた手に、やわらかい小鳥のひなを包むように、やさしく力がこもるのを私は感じていた。

ふたつ、重なった影の。

黒々とした、深い闇。

私には何も見えない、甲本ヒロトと真島昌利の真っ暗闇のことを思った。


でも、甲本ヒロトと私の影も、ほんのたまにはまじりあうことができるのだ。ほかの誰も知らない場所で、ほかの誰も知らないやり方で、静かに。とても強く。きっと、このまま混じり合えば混じり合うほど、いろんなことがややこしく、私の寂しさもより深く、暗闇のように濃くなって行くのかもしれない。だとしても。

(なんど暗闇で迷っても、)


(目を凝らして。)


(だいじょぶ。)


くしゃくしゃと甲本ヒロトの手が私の髪を撫でた。

もう少しだけ、甲本ヒロトと私の影が重なり合うゆうぐれが続くといいなあ、と思ったけれど、私に革ジャンパーを被せている甲本ヒロトは半袖で、くしゅんとくしゃみをしたので、今度は私が甲本ヒロトに革ジャンパーを羽織らせた。




甲本ヒロトと手をつないで部屋に帰った。
真島昌利へのお土産はあのパン屋のカレーパンで、見せたら横目でみてフンと言った。
もういちどあのレコード・ゲームをやろうよと言ってみた。
付き合いのいい甲本ヒロトと真島昌利は目を見交わして肩をすくめ、慣れて来た手つきでレコードを配る。



ゲームは私の大連敗だ。



コメント

こんにちは。

か、かわいい……。
甲本ヒロトくんが持つ、柔らかくてやさしい空気がだいすきです。
仲間はずれにされているわけではないけれど、仲間はずれにされているような気になってしまった時、甲本ヒロトくんがいれば安心できるんだろうな、いいな。と思いました。お話そのまんま、ですが。

振り向いたら甲本ヒロトさん笑って立っていたあたりでちょうど、私のiPodは「メインジェット」を選曲してきました。
(シャッフルしてたので、その前は(Sittin' On) The Dock Of The Bayがかかってました)
このストーリーの流れ、そしてそのタイミングで「メインジェット」がかかって、そのままエンディングへ、というのがびっくりするほどしっくりきて・・・
iPodって時々こういう洒落たことをしてくれるよなぁ、と思いました。
にあさんも、以前iPodにはDJが住んでる、というようなことを書かれていた記憶がありますが、本当に住んでいます!

こんにちは。
またまた素敵な話ありがとうございます。
やっぱり迎えにきてくれる甲本ヒロトが大好きです。やっぱり部屋で待ってる真島昌利も大好きです。

凛華さん
いつも「かわいい!」ってコメントを書いてくれてありがとう。私がヒロトさんから感じるものは、いつもやさしさだし、すごく穏やかな空気です。もしもそれが凛華さんにも伝わったならうれしいな。

ルードガールさん
DJがいい仕事をしたようですね~。ドッグオブザベイからのメインジェットは、思い浮かべるだけでちょっとかっこいいし、そのかっこいい曲が物語に合っていたと言って頂けて、光栄です! お話を読みながらの音楽っていいですよね。私も時々、DJに神がかった選曲をされて感動することがありますよ。

なみ平さん
読んで下さってありがとうございます。
甲本ヒロトと真島昌利がいれば、なんだかんだあっても、やっぱり楽しい毎日なのです!

更新後すぐ読んだのに、何だかすぐにコメントできなかった…
多分、とあるの「私」が羨ましくて、心がザワザワしてたから。

昨日も、ペットショップに行って、可愛い犬や猫達を見てきたんだけど、
私が欲しいのはワンちゃんでもネコちゃんでもなく、「甲本ヒロト」です。
私も、以心伝心で(だいじょぶ。)とか言われたら、泣きます。

もし、また「捨て甲本ヒロト」を見かけたら、すぐに連絡くださいね!

Marilynさん
羨ましいなあ、って思っていただけるほど、すごくすごく感情移入して読んで下さってありがとう。書き手として、とてもうれしいです。

夏を過ぎたら、また増えるんじゃないのかな? 「野良甲本ヒロト」! どこかで出会えると良いね!

リ~アル、より リアリティ♪ でした(笑)
「捨て・・・」じゃなくて、「野良・・・」ですね。失礼!!

まだ夏休みの宿題と闘っているどこかの中学生のために、
「野良真島昌利」との出会いも楽しみに待っています。

Marilynさん
うん、捨てられるとね、ほら、かわいそうだからね(笑)

学生諸君はちょっとたのしくない時期に突入ですね。ざまあみろ。ははは。夏の終わり、野良真島昌利もそこらを歩いてたらいいね。のらましまなら、私も複数飼いしたいです。

なんでゾンビーズ「好きさ好きさ好きさ」がダメなんでしょう・・・?
こちらのお話をうちのヒロトに聴かせたところ
『素晴らしい選択だと思うのにな』
と、うちのヒロトが目で訴えてきました。
これは真島科、ヒロト科では有名なゲームなんでしょうかね。

最近うちのヒロトの夏に集めたカブトムシコレクションが脱走しました・・・。
ノコギリクワガタとかいう一番のお気にいりが、まだ部屋のどこかにいます。
早く見つけてくれないと、夜トイレに行ったときに素足で・・・と想像すると寝れません。

常駐ヒロトスキーさん
私も「好きさ好きさ好きさ」、ほんとうに好きなシングルで、だから出してみたんですけど、あのゲームにはいろんなルールがあるようですね。ビートルズで負けたり、セックスピストルズでまさかの勝利をおさめたり、あいかわらず彼らの世界は広く深く、でも、すべてのロックンロールを私も彼らもだいすきですよ。

それよりノコギリクワガタが気になりますね。はさんじゃうぜされるまえにどうにか捕獲できるよう祈っています。えっとね、カーテンの裏に隠れていることが多いんですよ!(実話)

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