ハ ウ リ ン キ ャ ッ ツ

 五線譜という名の線路を辿り、きみと奇跡を探しに行こう。

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負け犬たちの子守唄

THE ROCKSTORIES」という素敵げな番組をフジテレビでやるそうで楽しみにしているのですが、HPでなぜだか揃いの学ラン姿のましまさんとヒロトさんの写真をまじまじと見たとたん、きゅうに漲って一気に書いたただの妄想です。ただの妄想です。ただの妄想です。3回言いました。もう一度言います。ただの妄想です。




家族がいない日を狙って学校帰りにあいつをおれの4畳半に呼び込み、ビールから始まって焼酎、ジン、日本酒、それでまたビール挟んでもう一回焼酎に戻って、やっと酔っ払ったヒロトが回らない口で本題を話し出した。ここまで話を持って来るのに7時間半、時間だけは腐るほどあるとはいえ、付き合ってやるおれもおれ。
「マーシー僕ねえ、僕さあ、ずっと好きな子がいてさあ、どうしようもう」
ああやっぱりそういうことか。だろうと思った。
最近、こいつ挙動不審過ぎ。めいっぱいはしゃいで螳螂みたいな細っせぇ足でやたら渡り廊下を飛び跳ねてるかと思えば、授業をさぼって午後いっぱい、ほこりくさい軽音楽部の部室で電気もつけず、ひとりで延々訳のわからんヒーローものの漫画読んで涙ぐんでる。率直に言わせて貰うと、気持ち悪いし扱いづらい。バンドメンバーたちも上り下がりの激しいヒロトについてゆけず、このところ練習も遅滞気味なのだ。
「……誰、相手」
「ん? さて誰でしょうかぁ?」
向かい合って座った炬燵の上に、がくんと顎を落としてへらへら笑う。伸ばした手でおれのコップに焼酎を生で注いだ。ああ零した。勿体ねえ。いいちこなんだぞ。勿体ねえ。
「あの娘じゃないの、ほら何度か部室にきてた」
「だれ? あああいつ? 外れ、あれは……あれはねえ、もう過去の女!」
「……ヒロト君さあ、あちこちであんまりおいたしないほうがいいと思うよ?」
「してないよ、ちょっとしか」
へへ、と笑う。目が細められて、顔中に皺がより、妙に人懐こく無邪気な表情になる。あーあーこういう顔に騙されるんでしょうかねえ、かわいそうなレディたち。でも、おれはだまされねえ。君のおいたはちょっとじゃねえだろ、ぜったい。
「そーゆんじゃないんだもん。恋しちゃったんだもん僕」
なーにが「だもん」だよ。首傾げてかわいい振りしても、制服の上に着てんの、モコモコのどてらだぞ。寒がり。

ヒロトとは高1のときから同じクラスで、バンドまで一緒に組んで、好きな音楽とか本とか、いろんなことを話して来たけど、なんだか妙に照れくさくて、好きな娘の話はしたことがない。おれに彼女が出来ても、ヒロトに紹介したことはなかった。ヒロトも自然にそうしていた。でも、ヒロトは俺より少し素直だから、特別話はしなくても、彼女が出来れば鼻歌でビートルズかなんか歌って、部室をその娘に見せたりして、明らかにバレバレだったけどな。

それにしてもここ最近のヒロトの躁鬱には、さすがのおれもちょっとついて行ききれない。
「夕焼けってさ……哀しいよね……」
とか突然呟く、ヒロトの気味悪い言動には誰の目にも明らかに恋と言う名の症状が見え隠れしてたんだ。
今夜は新しいローリングストーンズのレコードでヒロトを釣って、とにかく飲ませて、その重い口を開かせてみようかしら、っていう安易で単純な作戦なのだ。
まんまと成功、幸先いいけど、ちょっと釣られすぎだぜ、ヒロト君。

「マーシーはさ、恋しないの? 好きで好きでたまんなくて、っていうことないの?」
炬燵がちょっと熱い気がして、手を突っ込んで温度を探っていたら、とつぜんヒロトにそう聞かれたので、俺はダイヤルをどっちに回せば炬燵が冷めるんだかを見失う。
「……そりゃあ、あるよ」
その頃、おれも身を焼かれるような苦しい恋の真っ最中だったのだ。ヒロトには言ってないけど。
「あるよねえ。なんだろね、これね、もう僕ね、いま、触りたくてしょうがないの、その子に。触るまでは触るだけでいいって本気で思ってるんだよ、でもきっと、触ったらきっと次はキスしたいって思うようになる」
ヒロトは真面目で正直だ。おれは思わず口元に笑みがのぼってくるのをかみ殺す。酔眼朦朧としているにも関わらず、今夜のヒロトは案外理知的によく喋る。おれはヒロトの少し甲高い声を聞きながら、なみなみ注がれた焼酎をクビリと飲む。
「いいんじゃないの、それが、す、好きって言うことなんだし」
こんな言葉、もっと酔っ払わないと、普段下らないことばっかり話しているヒロト相手に、真剣に言えないじゃないか。
「でも、ぼくのことぜんっぜん相手にしてくれないんだよー」
完全にテーブルにうつぶせた顔の下からくぐもった声が漏れた。眠りかけているのだろうか。
「で、相手は誰なんだよ」
早いうちにそれだけ聞いておこうと思った。聞いてどうしようって訳じゃないけどさ。
「……」
ぼそぼそ、と何か言った。
「ああ? 誰?」
ぼそぼそ。耳を近づけて、ヒロトの声を拾う。
「……ちゃんが好きなんだよ、僕は……」

おいおい。アリかよ、そんなん。
ヒロトの口からイヤに大事そうにやさしく発せられた名前は、おれにも聞き覚えがあるもので。
聞き覚えがあるどころじゃない、その名前はつまり、おれにとっても大切で、それであんまり痛い名前で。
こないだ木っ端微塵に砕け散ったおれの恋、それでまだ未練残りまくりのおれの恋、その相手が、まさかヒロトとかぶるとは、て言うか、ヒロト、お前も、あの娘に恋をしてたのか!
……一気に、酒が冷めたな。寒。炬燵強くしよ。
がばっとヒロトが顔を上げた。名前を言ってしまって気が楽になったのか、焦点の定まらない目で、堰を切ったように話し出す。
「マーシー僕ね、ほんとは振られちゃったんだあ、でもまだ好きなの、女々しいよねえ?」
「……別に女々しくはないんじゃない?」
「もう付き合ってる人がいるんだって、だからダメなんだって、でもさあ僕、そいつと早く別れちゃえとか思っちゃうんだ。彼女が幸せになればいいとかぜんぜん思えない、ひどいよねえ?」
「うーん、でもそう思うの、当たり前だと思うよおれは」
いやおれなんてそれ言われたとき、いっそ付き合ってる男、死ねとか思ったし。
「マーシーは優しいなあ、マーシー女の子だとよかったのに」
やだよおれは。
「なあなあマーシーも恋してる? マーシーが好きなんは、どんな娘?」
ああ、おれってこういうとき、とっさに機転の利かないタイプ。
また馬鹿みたいにヒロトがおれのことをこどもみたいにじっと見つめるもんだから。どぎまぎして。
「ヒロト……」
「えっ僕?!」
「なわけねえだろ、ヒロトと……同じ、な、解る?」
ふえ、ってヒロトが妙な声を上げて背を反らす。そのまま、時間、かすかに止まる。いや止まるわけあるか。そんなに簡単に時間は止まらない。止まったら大問題だ。
おれの手が行き場なく炬燵布団を擦る。さくさく。やっぱり熱いな。炬燵布団ばさばさ捲る。目の端に、おれの赤いソックスがいやにまぶしい。校則に反して赤い靴下を履いて、めっちゃくちゃに怒られちまいたい心境のときに限って、誰もかれもがおれを見逃すんだ。

沈黙がたまれば、誕生日にヒロトがプレゼントしてくれた、わけのわからんアニメキャラの時計が安っぽい棚でカチカチ言ってるのがはっきり聞こえる。ん、もうすぐ真夜中。
「……彼氏って、彼氏って、じゃあ、それってマーシーってこと?」
「違うよ、おれも振られ、て」
ああ恥ずかしい。
「なあんだ、そうなのっ?」
なあんだ、振られたんか、なあんだ、と忌々しいことに何度も嬉しそうに呟きながらヒロトはゆっくり後ろに倒れた。
音楽雑誌が積みあがってるところに頭を打ったらしく痛ぇ、と叫んだ後、くっくくっくと笑い出した。ヒロトの頭はどうでもいいが、その横にはおれの命よりだいじなギターがある。注意しろ。
「マーーシーーィ」
炬燵の向こう側の見えないとこから声がする。
「なーにィ」
「これさあ、僕がさあ、そんなに好きならマーシーに譲るから、マーシーがんばって、とか言っちゃう場面?」
落ち着いて焼酎少し飲んだ。長くて細っせぇヒロトの足が炬燵の中でおれの膝をうにうにと突く。何て言おうかちょっと迷った。うう、迷うと途端に言葉って出てこねえ。
少し経ってから、さっきまでヒロトのいた真正面の虚空を睨みつけて言ってやった。
「馬っ鹿」
ははっ、ってまたヒロトが床で軽く笑う。
「二匹の負け犬」
おれがぼそっと呟くと、ヒロトが変な節をつけて寝ながら歌った。
「負け犬でも恋はするんだぜ、まだ好きなんだぜ」
「あ、まだ好きなんだ?」
「好きだぜ大好きなんだぜぇ、マーシーだってそうだろう?」
「あーおれもねえ、一回完全にこてんぱんに振られたんだけどね、まだ好きだねえ、うんもう大好きですわー」
「腹立つよね、なんでこんな好きなんだろう」
「訳わかんないよねほんとに」

部屋に充満した酒と煙草の匂いをどうにかしようと、一度は炬燵から立ち上がりかけたものの、急に襲ってきた焼酎の酩酊に、もうどうでもいいや、っておれもヒロトの真似してばたりと横になっちまう。
ああ、電球の光が弱くなってんな。天井で羽虫が死んでら。一匹二匹あといっぱい。どうでもいいや。
行き場のない思いを抱えてこのまま眠っちまおう、今夜は。
おれにはおれの苦しい恋。ヒロトにはヒロトの苦しい恋。もう、こんな話をするのはごめんだな。
「まーぶーしーいーな、裸電球」
またヒロトがなんか唄ってる。まぶしいのか。そう見えるのか、ヒロトには。やっぱりヒロトは面白い。でも炬燵の中狭くて、あいつの細長い足、邪魔だから軽く蹴ってやる。反対側で随分のんびりとした不平の声が上がった。
絶対あきらめないぞ、おれは。電球の光がいくら弱くったって、そんなの関係ないからな。
ん? 電球? それはホントにぜんぜん関係ないか?
瞼の裏の彼女の残像に俺は固く誓う。あきらめないからな。見てろよ。

一気に引き込まれて、とろとろ眠りかけた。遠くでヒロトの歌う声が聞こえた。
何を歌ってるんだかよく解らないけど、なにかそれは底なしに明るい歌のように思えた。


魂をほのぼの照らすようなその歌は、
きっと、負け犬たちの子守唄にちょうどいいんだ。

コメント

永遠です!

ニア様、こんばんは。
ご無沙汰しています。ニア様もベイビーもダーリンも、みんなみんなお元気で何よりです。

そしてこの若くて純で、青臭くてアホドジマヌケで、笑いながら涙ぐんでしまうようなストーリー……一気に堰を切って溢れ出すままに書いて下さって、ありがとうございます!

毎日成長し変化していくベイビーにあたふたしたり、ふっとでも何だかんだ言ってもやっぱり可愛いな♪私にもこんな感情があったなんてェ…(^.^)とかやっていると、気がつけば日付が変わる。
明日こそはあれしよう、これもしなくちゃ……と思いつつ。
ついつい先のばしにしてしまったりなのですが。

おっちゃん達のコスプレは、ニア様のどこかを刺激したのかなー(//∇//) そして、こう一気に書いて下さったストーリーだからこそ、何の照らいもなく読み手の心の奥に直球でずどーん★と届くのですね。
思わず、やった!!待ってました!!と思っちゃいました。ありがとうございます!

とは言え、それこそ日々変化するベイビーありき。ご無理のないよう、かけがえのない今の時間を大切になさって下さい。そして時々、マーシー不足の発作が出たら………突撃ロック!!して下さいませ。

またいつか、きっとお会い出来ますね。その日を楽しみにしております。
……………またね(^.^)

こんにちは!学校帰りに中学生カップルを横目ににやにやしながらお話を読んでいたら、中学生カップルにやばいんじゃねえのこいつという顔をされた凛華です。くそう、別れちまえ。

きっと高校生だった彼らも、好きで好きでたまらない女の子がいたのかもしれません。青臭くて愚かでみっともなかった高校生の彼らをにあさんのブログを通して私の中に見た時、なんでか泣きたくなりました。彼らみたいな高校生になりたかった。

ごちそうさまでした。

さくさん
コメントをありがとうございます! ベイビー……エイトですね! 元気です! ダーリン……あ、昌利さんですね! 元気ですよ。お気遣いありがとうございますウフ☆ ご覧の通り、私も元気です。

さくさんを「待ってました!」と思わせたなら、一気に更新した甲斐があったというものです。完全な創作は、いつも更新するのに勇気がいるんですよ。
エイトを見ていると、彼がやがて中学生になり、高校生になった日のことを思ってしまいます。こんな思いをすることもあるのかもしれないな、という想像が、ヒロトさん真島さんの学ラン姿とぶつかってこの話が出来たのかもしれません。

息子さんを立派に育て上げたさくさん、伺いたいことがたくさんあります。またきっとお会いしましょう、そう遠くないうちに。

凛華さん
青春とは無名のことである、って、誰の言葉だったかしら。まっただ中にいる人には、本当は自分もまた同じ物語の中にいるなんて、わからなかったりするものなんだよ。

でも私も憧れてた高校生とかけ離れた生活を送ったから、未だに悔しいけどね。「チャリ二人で乗って帰る」「彼氏のコートのポッケに手を入れる」とか、やりたかったなあ〜。……くそう、全国の学生カップル別れちまえ(すごく心が狭い大人)

ほんとはまた書きたいです、若いヒロトさん&真島さん話……。

ニアさんこんにちわ。お久しぶりにコメントさせて頂きました!エイト君、ニアさん、昌利さん(?)、みなさんお元気で何よりです。


久しぶりにニアさんの素敵な妄想が繰り広げられてて、高ぶりました。真島のあの赤い靴下の謎は、そうゆうことだったのかとすっきりいたしました。笑

エイト君のお母さんになっていくご様子は、とても幸せそうなので、ブログを通して見ている私もあったかい気分になります。これからも楽しみにしていますね。

あ、ご主人にお伝え下さいませんか?


ツアーまだ?アルバムは?待ちきれない輩がたくさんいて、今にも暴動が起きそうですが、、、と。笑 宜しくお願いします。それではまた遊びにきます(^ω^)

のりこさん
お久しぶりのコメント、とても嬉しいです! また会ったね! こどもが出来たからって特に妄想に歯止めがかかるわけでなく、まいにちまいにちこういう物語のようなことを考えていますよ。

ましまさんが私とエイトのことばっかり考えて、ツアーの開始を渋っているようなので、のりこさんからのコメントもあったことだし、確かにこれでは皆さんに申し訳ないと思い、ましまさん……ツアーやってもいいんだよ……私とエイトはお利口に待ってるからNE☆と伝えたところ(心の電波で)、あっという間にアルバムとツアーが発表になりましたね! 

以上のようなことを真顔で友人に語ったら、非常にかわいそうな顔をされ「どうしてここまで放っておいたんだ」と言われました。のりこさん、こんなブログでよければまたぜひいらしてください! 

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